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■『勝手にふるえてろ』■(映画) 



かってにふるえてろ
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意外にも本作は松岡茉優映画初主演作なんだそうだ。

本作を観た前日は彼女が主演していた『コウノドリ』が最終回だったので、なんだか松岡茉優デーのような感じだったな(「探偵!ナイトスクープ」では本作の宣伝でゲスト出演も)。

彼女がメジャーになったのはやはりNHKの『あまちゃん』なんだろうけど、僕はあのドラマ、半分以上観てなくって、その観てなかった部分で彼女が登場していたのだった。

実際にこの女優を初めて観たのは同じくNHKのドラマ『銀二貫』だった。
高田郁による原作(江戸時代の大阪を舞台にした人情劇)はドラマになる前に読んでおり、ドラマ化されると聞き、主人公はもとより(主人公松吉を演じたのは林遣都、見事だった)ヒロインを誰が演じるのか興味深かった。
火事に遭い、顔に大きな火傷を負ってしまうが、主人公松吉の大きな心のよりどころとなる、大事な役柄である。
結局、少女時代を芦田真菜が演じ、大人になったヒロインを松岡茉優が演じるという。
誰? それ? と思いつつ、ドラマを観たわけだが、原作のイメージ通りの役柄(火傷は顔ではなく首筋に変更されていたけれど。事務所からの要請?)を演じきったその女優に大きく惹かれた。

以後、同じくNHKでは水族館のイルカショーのトレーナーを瑞々しく演じた『水族館ガール』、そしてTBSの『コウノドリ』と、着々とキャリアを積んでいく。
そんな印象があったので、映画初主演作というのはほんとに意外(映画では『ちはやふる』にも出てたしね)だった。


綿矢りさの原作小説を、大九明子が映画化。
綿矢りさといえば、過去に映画化された『インストール』(監督は片岡K。最近まったく名前を見かけなくなったね)は観たけれど、大九監督の作品は初めて観ることとなる。

恋愛経験のないヒロインが、中学生時代からの片思いの相手(北村匠海。彼女の中で勝手にイチ(1)と呼んでいる)を理想の恋人と夢想する中で、突然告白された会社の同僚(渡辺大知。彼女の中では二(2)と呼んでいる)との間で揺れる姿を描く。
理想と現実の中で、いろんな価値観が自身の中でグルグル回るところを映画はコミカルに描き、松岡茉優はこれを多少オーバーアクト気味に演じる。
特に思い込みの激しいヒロインは、周囲を巻き込んで相当にエキセントリックなキャラである。

ただ、あることがきっかけでヒロインの価値観がもろくも崩れ去ってしまうのだが、映画はこれを境にテンションがガラッと変わる。
これには多少戸惑ってしまったけれど、あくまでヒロインの心情に沿った映画と考えれば至極当然な演出であり、松岡茉優最後までヒロインを演じ切るのだ。

最後に放つヒロインのセリフが、じつに重みを持って響いてくる。
それは一体誰に向かって放たれた言葉なのか。
なんでもそこは、原作小説とは違ったニュアンスで表現されているそうだが、いろんな解釈ができるということで、映画的な奥行きを監督は持たせているんだと思った。


自分の価値観が、なにかのきっかけで崩れてしまうことは、生活している中で多かれ少なかれあること。
程度の差はあれども、思わずうろたえてしまったりするわけだが、それを表面に出さないことで、自分を含む社会の均衡は保たれている。
でも、この映画のヒロインはそれを思いっきり表にさらけ出すのだ。
それは人間本来の姿であるものの、理性が働いて抑制することもまた人間の姿。
ただ、本作で描かれるようなテーマはもとより、あらゆることで抑制された気持ちを、この映画のヒロインの姿に投影し、少しでも発散できることを考えれば、本作は一服のストレス解消剤なのではないかと僕は感じた。


最後に一つ。
まったく恋愛経験のないヒロインを、松岡茉優が演じるのは、説得力に欠けやしないかぃ?(笑)
これは昨今の異常ともいえる恋愛映画ラッシュの、大きな欠点の一つでもある。
恋愛経験がないだの、恋人にふられるだの、人気美人女優がこぞってそういった映画に出演しているけど、普通に考えりゃありえないわな。
そういう意味では、この作品も例外ではなかったな。



📖パンフレット📖

・縦170㎜×横257㎜
・14ページ 無線綴じ製本
・アベ印刷
・定価:720円(税込み)
表紙はPP貼り。中身はオールカラー。
キャスト、スタッフの詳細以外に、幾人かの漫画家、イラストレーターによる「応援イラスト」が面白い。



♬音楽♬
かってにふるえてろべいびーゆー
スコア担当は高野正樹。

CM、ドラマなどで活躍されているそうで、大九監督とも過去にコラボを組んでいる由。
最近では『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き』のスコアも担当。

正直、映画を観ている間は印象に残るスコアではなかったのだが、本作で最大の功労はヒロインの価値観が崩壊する場面。
あのいきなりのミュージカル仕立てな演出は本作最大の見せ場であり、松岡茉優の歌手ぶりが発揮される稀有なシーンである。

そこで歌われるソング・ナンバー「アンモナイト」の作詞は大九監督、作曲を高野氏が担当。
残念なことに本作のサントラはリリースされておらず、松岡茉優の歌声も映画を観ないと聴けないという状態。
どんな形でもいいから、音源、リースしてくれないだろうか。

なお、エンディング・テーマは劇中、二(2)を演じる渡辺大知がヴォーカルを担当するユニット、黒猫チェルシーによる「ベイビーユー」。
【amazon 初回生産限定盤(DVD付)】
【amzon 通常盤】
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【タワーレコード 通常盤】
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■『8年越しの花嫁 奇跡の実話』■(映画) 



はちねんごしのはなよめ
【公式サイトはこちら!】

コンスタントに映画を監督している、瀬々敬久監督の最新作。
昨年は『64』を発表し、今年は本作と同時に『最低』も公開中ということで、ほんとうに精力的だ。

岡山在住のカップルに起こった実話を、自身たちが手記として発表し、TVで取り上げられたことで話題となった。
いわゆる難病もの(同じ病気を扱ったクロエ・グレース・モレッツ主演の『彼女が目覚めるその日まで』が公開されているのは、単なる偶然?)一つだが、創作ではなく実話ということで、奇をてらったつくりではないところがまず好感のもてるところ。
ここは瀬々監督と脚本を書いた岡田恵和のタッグが功をなしたというところだろう。

映画は二人の苦難の日々を淡々と描いていくのだが、時間の経過をスプリットなどを駆使して表現するなど、わずかに映画的な表現を盛り込んでいる。
しかし、それさえも映画の本質をさえぎるものではなく、極力「創作」というイメージを持ち込まないところに作り手側の良心を感じる。
映像的な処理よりも、小道具の使い方に長けていたが、それは敢えてここで書くことではなく、実際に映画を観て確認していただきたい。

カップルを演じる佐藤健、土屋太凰の演技も素晴らしく、前者は完治する保証のない恋人の回復を待ち続ける、これまでになく(と書くと失礼か)ストイックなキャラを瑞々しく演じ、後者は普段は活発な印象のある女優(某自動車CMのキレッキレなダンスに顕著)だが、徹底したリサーチの下、重い病を患ったヒロインを演じきった。
さらに、ヒロインの両親を演じた薬師丸ひろ子、杉本哲太も素晴らしく、映画に説得力をもたらすいいキャスティングだったと思う。
特筆すべきは中村ゆり。
薄幸な女性を演じれば日本映画界ダントツの印象がある彼女が、珍しく今回は幸をもらたす人物を好演している。
じつに「わかった」キャスティングだ(笑)

岡山を中心にロケが敢行され、さらに重要な舞台として小豆島が登場するのは、関西人の僕としては嬉しいところ。
物語の本筋とは少し離れるものの、ともすれば暗く重くなりがちな物語に、小豆島の農村歌舞伎を持ち込むことで、ある種の風穴を開けるのは効果的だったと思う。

人の関わりの大切さ、とりわけ本作では「家族」をテーマに人間を描く瀬々監督の視線は今回も揺るがない。
単に物語のアクセントとして難病ものを取り込む他の映画とは一線を画している。
そういう真摯な姿勢が、ラストの感動を呼び起こすのだ。
心して鑑賞されたし。




📖パンフレット📖

・縦181㎜×横227㎜
・18ページ 無線綴じ製本
・株式会社久栄社
・定価:720円(税込み)

全ページマット調の原紙を使用で落ち着いた印象。
表紙はマーメイドを使用か、手触りのよいファインペーパーが使われている。
内容は主要登場人物のプロフィール、監督、脚本家をはじめとするスタッフのプロフィールに加え、ヒロインが罹る病である抗NMDA受容体脳炎の解説、ロケ地マップなど。
最後の2ページは関連グッズと松竹2018年カレンダーの広告ページ。



♬音楽♬
はちねんごしのはなよめ
スコア担当は、『64』でも瀬々監督と組んだ村松崇継。

こういったテーマの作品は、まずメインテーマのメロディが成功の鍵を握ると思うのだが、そういう意味では今回も素晴らしいスコアで魅了してくれる。
とはいえ、その使い方は極々控えめ。
しかし、クライマックスでは怒涛のように、コーラスを伴いながら盛り上げてくれる。
その匙加減が絶妙である。

またドノヴァンの名曲、「キャッチ・ザ・ウィンド」をマーク・マイルズなるシンガー(詳細判らず)がカヴァーしたナンバーが流れたり、女性シンガーによる英語のナンバーが流れてくる。
この女性シンガーはシャンティ・スナイダー。
かのゴダイゴのメンバー、トミー・スナイダーの娘さんなのだそうだ。
本作でソング・ナンバーといえばエンディング流れてくるバックナンバーのヴォーカル曲がキャッチーだが、劇中の要所要所で流れるシャンティ・スナイダーのヴォーカルが一つの清涼感をもたらしてくれる。

なお、サントラにはシャンティ・スナイダーのヴォーカル曲は村松崇継のスコアと共に収録されている(インレイにはマーク・マイルズ、シャンティ・スナイダーの紹介がまったくないのはどういうこと?)が、バックナンバーによるエンディング曲は未収録。
【amazon】
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はちねんごしのはなよめまばたき

で、そのエンディングに流れてくるバックナンバーによる主題歌「瞬き」。
昨年の『僕は明日、昨日の君とデートする』に続き、毎年この時期定番アーティストのような印象があるが、本作も物語に沿った歌詞とともに溜飲を下げてくれる。

初回限定盤やら特典がついてるやら、お好きなのをチョイスしていただきたい。
【amazon 初回限定盤(DVD付) 特典:ICカードステッカー】
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ビンさんの銀幕音楽堂・第826回(2017年12月23日放送分) 



銀幕20171223










【放送日:2017年12月23日(土)PM9:00オンエア】
【再放送:2017年12月27日(水)PM6:00オンエア】

・ビンさんが選ぶ、2017年度映画ベスト10!(後編)

※オンエア終了しましたのでアップいたします。

第5位:『ウィッチ』 7月22日公開

17世紀のアメリカはニューイングランド。
敬虔なキリスト教信者の一家がコミューンを離れて暮らし始めた森のそば。
そこで起こる奇妙な出来事が、やがて家族崩壊へと暴走してしまう恐い恐い映画。
当時の様子をできる限り再現した、本作が長編初作品となる監督ロバート・エガースのこだわりもさることながら、主役を務めたアニャ・テイラー=ジョイが絶品!
シャマランの『スプリット』でもいい演技を見せてくれたが、いやいや、本作の彼女の魅力の前では霞んでしまうほどだ。
衝撃のラストもいろんな解釈ができるという、何度も鑑賞に耐える作品でもある。
監督のこだわりに準じたマーク・コーヴェンのスコアもまた魅力的。
極力小編成のオケが奏でる「悪魔音楽」は、作品世界を盛り上げるに余りある。絶品!

♪『ウィッチ』ostより「What Went We」(co:マーク・コーヴェン)


第4位:『新感染 ファイナル・エクスプレス』 9月1日公開

意外にも韓国映画初のゾンビ映画だという。
釜山行きの列車内で起こる、ホラー・パニック・アクション巨編だが、主役の親子のエピソードを中心に、乗り合わせた登場人物それぞれにエピソードが語られるという、いわばグランド・ホテル形式でもある構成が面白い。
で、そのエピソードが逐一泣かせるのだ。
いやぁ、ゾンビ映画で泣けるとは思わなかった。
韓国映画のバイタリティ、ここに極まれり、といったところ。
チャン・ヨンギュのスコアも、わかりやすいメインテーマの旋律はもとより、クライマックスのリリカルなスコア等聴きどころ多し。
挿入曲「アロハ・オエ」の使い方かもGood!!

♪『新感染 ファイナル・エクスプレス』ostより「Main Theme」(co:チャン・ヨンギュ)


第3位:『彼女がその名を知らない鳥たち』 10月28日公開

イヤミスの第一人者、沼田まほかるの原作を、『凶悪』の白石和彌監督が映画化。
同じ原作者の映画化では、今年は『ユリゴコロ』もあって、これもけっこう面白かったが、本作はそれを遥かに凌ぐパワーを持っていた。
唾棄すべき登場人物たちが織りなす奇妙なラヴ・ストーリー。
しかし、最後に怒涛のような感動の波が押し寄せる。そのメーターが振り切ってしまうかのようなふり幅の凄まじさよ。
主演の阿部サダヲと蒼井優の名演が魅力的だったが、特に蒼井優、今年はTBS系ドラマ『ハロー張りネズミ』での霊媒師役に端を発し、『ミックス。』での中華料理屋のおばちゃん(?)等、それまでのイメージを覆すキャラクターが目立ったが、本作はその集大成ともいえる。
近畿を中心にロケを敢行したのも、関西在住の自分にとっては嬉しいところ。
特に近鉄上本町駅構内でのシーンは、よく知った場所でもあり、こういった点も+ポイントだ。
大間々 昂のスコアもまるで鎮魂歌のように流れてくるエンドクレジットのタイトル曲が、凄まじいこの物語の留飲を下げるかのように流れてくる。
劇中のスコアはあまり印象に残らなかったが、このエンドクレジットには正直震えた。

♪『彼女がその名を知らない鳥たち』ostより「彼女がその名を知らない鳥たち」(co:大間々 昂)


第2位:『しゃぼん玉』 3月4日公開

乃南アサの原作をTVシリーズ『相棒』の演出を手掛けた東伸児監督が映画化。
監督にとっては長編映画初監督となる。
主人公の孤独な青年が、犯罪を犯して逃亡中に立ち寄った宮崎県の山村。
そこで出会った老婆と、村人たちとの交流の中で人間性を取り戻していくというお話。
主役の青年を林遣都、老婆を市原悦子が演じており、特に市原悦子の名演は、日本映画界の宝ではないかと思うくらい絶品である。
直接ストーリーには関係ないが、犬好きの僕の琴線に触れる演出も嬉しいい。
青年と老婆の交流にある終止符が打たれるのだが、クライマックスからエンディングにかけては、涙が止まらなかった。
エンドクレジットには秦基博の「アイ 弾き語りversion」が流れるのだが、ここもひとつのストーリーになっている。

♪『しゃぼん玉』より「アイ 弾き語りversion」(vo:秦基博)


第1位:『お嬢さん』 3月3日公開

サラ・ウォーターズの小説「荊の城」を、日本統治下の韓国に設定を変えて映画化。
監督は奇才パク・チャヌク。
パク・チャヌク作品はもともと好きで公開されるたびに楽しみにしているが、今回は期待以上の完成度にまず満足。
とある日本人の金持ちの令嬢をたぶらかし、その遺産をせしめようとする詐欺集団。
その手先として屋敷に下女として潜入した少女(キム・テリ)と、屋敷の令嬢(キム・ミニ)との間に生じる恋愛感情。
そこから物語は二転三転するコン・ゲームの面白さ。
それに加えてむせるようなエロティシズム、さらに日本のサブ・カルチャーを盛り込んで展開される独特な世界観は、さすがパク・チャヌクというべき珍品、いや、逸品。
3月に本作を観た時点で、すでに今年のベスト1はこれだな、と確信していた。
パク・チャヌク作品の常連、チョ・ヨンワクのスコアも素晴らしく、映像を大いに盛り上げていた。
すべてにおいてパーフェクトな映画であった。

♪『お嬢さん』ostより「イムが来る音」(vo:ガイン&キム・ミンソ)


・『天使のいる図書館』のコーナー

『天使のいる図書館』より「欲望のしるし」(vo:奇妙礼太郎)


以上のラインナップでお送りいたします。


奈良のコミュニティFM、FMハイホー(81.4MHz http://www.fm814.co.jp/)にて、お送りしております1時間の「映画音楽専門番組」です。

放送日:毎週土曜日 PM 9時~10時
再放送日:毎週水曜日 PM 6時~7時 (土曜日放送分の再放送です)

当番組はサイマル・ラジオでも発信しています。
ご自宅のPC、スマートフォンでお聴きいただけます。
上記、サイト内のバナーをクリックしてください。




【裏ばなし的なもの】

今回は先週の続き、年末恒例、ビンさんが選ぶ映画ベスト10の後編をお送りいたします。
2016年12月1日~2017年11月30日の間に劇場で観た映画の中から、選りすぐりの10作を紹介。
今夜はその後編ということで、第5位から堂々の第1位の作品を音楽交えて紹介いたします。

そして、途中に挟み込むのは、『天使のいる図書館』の特別コーナー!
思い入れが強すぎて、有無を言わさず第1位に推すのもどうなんだろか・・・ということで、敢えてベスト10からは外しました。
その分、特別コーナーを設けまして、作品にまつわる(あんまり、まつわった話はしてないけど)話などを、いまさら蒸し返してみよう、という内容です(笑)

本年のオンエアはあともう一週あります。
次回はいよいよ『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』をとりあげますので、お楽しみに!

ってなわけで、これだけ毎日毎日寒くても、ぜんぜん寒さに体が慣れないビンさんがお送りする1時間、ご用とお急ぎでなければ、ぜひぜひお聴きあれ!!


■『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』■(映画) 



スターウォーズサイゴノジェダイ
【公式サイトはコチラ!】

遠い昔、はるかかなたの銀河系で・・・。

「エピソードⅧ 最後のジェダイ」

レイア将軍の命を受け、ルークを探しに旅立ったレイとチューバッカ。
辺境の星トモガ=シマにルークを見つけたものの、将軍から預かった写真とは似ても似つかぬ、往年の伴直弥みたいな風貌になったかつての英雄に戸惑う二人。

「風の惑星がコケたのも、ガイバーがコケたも、俺のせいじゃないからな! うわぁ~~~ん」

と泣け叫びながら走り去るルークの姿に芸能界の裏側を見たレイだった。

一方、そんな状況をフォースで感じ取ったレイアは、早々にルークを見限り、独自の戦略でファースト・オーダーとの最終決戦に臨む。

カイロ・レンはアルバイト先の辺境の星、ナガ=サキで行方不明。
ファースト・オーダー最高責任者スノークも、猿のかぶり物ので幼女を誘惑し連れまわったことで警察沙汰に。

その状況を見計らってレイアは、かつて悪者をコテンパンにしたグンガン族とイォーク族を臨時招集し、総攻撃を開始。
かくして、レジスタンスはファースト・オーダーに対して大勝利をおさめ、グンガンのパレードとイォーク・セレブセーションとラプティ・ネックが流れるカラオケ=キッサで打ち上げに興じるのだった。

(ここで、♪チャンカ、チャンカ、チャンカ、チャララ~~~♪ とすぐにエンドクレジットが始まる)


・・・もう、何を書いてもネタバレになってしまうので、つらつらと妄想を書いてみた(笑)
ふぅ~~~ん、そんな内容なのか・・・なんて早合点しないように(しないよ!)。

以後も極力ネタバレは書かないので、ご安心を。

「フォースの覚醒」に始まった新三部作の二作目にあたる本作は、『LOOPER/ルーパー』(12)で話題となったライアン・ジョンソンが監督・脚本を担当した。
前作はローレンス・カスダンが脚本を書いたということで、ある種の安心感があったが(その実、EP4の焼き直し、なんて批判もあったりしたけど)、今回ははたしてどうなることやら、と観る前は一抹の不安があったが、いやいや、前作で敷かれたレールを見事に走り切ったという印象。
賛否両論あるのは当然ながら、個人的には十分楽しめたというのが素直な感想だ。

ただ、前作では劇中何度か感極まって涙するところもあった(それはしばらくのブランクがあって、ということも大きな理由ではあるが)が、今回は物語を追うのが精いっぱいで、感傷的になるような部分は少なかった。それくらい、本作ではあらゆる出来事が起こる。
上映時間も2時間半ということで、シリーズ中もっとも長くなっている。
それゆえ、途中ダレるという声もあるようだが、個人的にはSWの世界にどっぷり浸れた満足感の前ではまったく苦にならなかった。

ほんとに書きたいことは山ほどあるが、先にも書いたようにすべてがネタバレになるし、未見の方の興味をそぐことになりかねないので、このあたりで置いておこう。

とにかく、いまは続くエピソードⅨが早く観たい(その前にスピン・オフの『ハン・ソロ』もあるけれど)。




📖パンフレット📖

・縦302㎜×横228㎜
・42ページ 無線綴じ製本
・成旺印刷㈱
・定価:1000円(税込み)

まず、驚いたのは詳細なストーリーが掲載されていること。
ということは、パンフレットの製作時期を考えると、かなり早い段階で一部の方にはストーリーがわかっていたことになる。
後述するが、スコアの録音もかなり早い時期で行われている(前作の撮影と連続して本作の撮影が行われたため)ことを考えると、徹底した箝口令が敷かれていたことがわかる。
他にキャストのプロフィールや登場人物、メカ等などのページ、メーキングに関するページなど内容も充実。
ただし、最後の10ページは広告に費やされているのが、なんというか現代的というか、なんというか。

なお、限定版として、キャリー・フィッシャーの追悼ページ等数ページ増量で、表紙もレイたった一人のデザイン(価格は税込みで1200円)で販売されていたようだが、僕が観た劇場では公開2日目にしてすでに完売していた。
こういった限定版パンフというのも最近、ちょくちょく出くわす。
その実、ビジュアル的なページの増量というのがほとんどで、たとえば読み物の部分が増えているとか、おまけのDVDやCDがついている、というものにはあまりお目にかかったことはない。
本作に関して言えば、キャリー・フィッシャーの追悼ページは、通常版でも掲載して然るべきあり、それを限定版のみに掲載するというのは極めてナンセンス。
編集者は猛省すべし。



♬音楽♬
スターウォーズサイゴノジェダイ
スコア担当はシリーズ連続登板のジョン・ウィリアムズ。

本編を観る前にまずサントラを一通り聴いてみた。
スコアのタイトルからはネタバレになるようなものはなかったが、実際のスコアは・・・本当に細かい前知識も入れずに映画を観ようという向きには、サントラも先に聴くことはあまりお勧めしない。
それ以上のことは、推して知るべしである。

こちらもかなりデリケートな話題になるのだが、当たり障りのない範囲で書けば、まずは前作で聴かれた「レイのテーマ」、「レジスタンスのテーマ」、「カイロ・レンのテーマ」は、頻繁に登場する。
そこに、旧三部作から「レイアのテーマ」、「ハンとレイアのテーマ」、「ルークとレイアのテーマ」も盛り込まれている。
「ルークのテーマ」、「ジェダイ騎士団のテーマ」は当然のことながら流れてくる。
旧作からずっとスコアを聴いている向きには、いつもの如く、ライトモティーフで映画を盛り上げていくという、じつにわかりやすい構成になっている。
面白いのはEP4から「TIEファイターの攻撃」のフレーズも顔を出すところ。
こうなってくると、若干節操なくないかな、とは思うが、今回で8作品に携わってきたウィリアムズにしてみれば、自身の持ち駒をいろんな形で駆使した、というところなんだろう。

また、本作のスコアで耳を捉えて離さないのが、フィン(ジョン・ボイエガ)と新キャラクター、ローズ(ケリー・マリー・トラン)のために新たに書かれたテーマ曲だ。
慈愛と勇気に満ちたメロディ・ラインがじつに印象的であり、この二人が活躍する場面では、他のテーマと掛け合いのように流れてきて、音楽的な高揚感をもたらせてくれる。

また、フィナーレではエンドクレジットにおけるキャリー・フィッシャーの追悼文の部分では「レイアのテーマ」がピアノで奏でられるという趣向も。

ただ、手放しで喜べないのは、劇中に登場するカジノの惑星「カント・バイト」の場面につけられたスコア。
EP4での「酒場のバンド」やEP6の「ラプティ・ネック」のような、シンフォニックではない異質なスコアで、ひとつのアクセントとしては面白いのだが、今回はここにサンバの名曲「ブラジルの水彩画」のフレーズを用いていること。
全体のスコアは先にも書いたようにオペラに端を発するライト・モティーフを取り入れたスコアではあるが、あくまで地球とは異なる銀河の物語である。
そこに地球上のポピュラー・ミュージックを取り入れたのは、いかにウィリアムズを巨匠として讃える僕でも、ちょっとやり過ぎたかな・・・という感がある。
これを齢を重ねたことによるアイデアの枯渇とみるか、逆に余裕から来る巨匠なりの「お遊び」とみるかは人それぞれだが、個人的にはこれはやってほしくなかったなぁ・・・というのが正直なところではある。

なおサントラCDは国内盤、アメリカ本国盤同時リリース。
ゆえに国内盤には解説等は一切なし。
スコアのタイトルも英語表記のままである。
ただ、ジャケットには日本語のタイトルでの表記と、初回特典として特製スリーブ、ステッカーが3枚封入されている。
そういうのを作る期間があるのなら、誰かライターによる解説を添付してほしかったが、ギリギリのリリースではそれも叶わなかったのはよくわかるけど・・・ねぇ。
【amazon】:国内盤
【amazon】:本国盤
【タワーレコード】:国内盤
【タワーレコード】:本国盤
【iTunes】






■『エンドレス・ポエトリー』■(映画) 



エンドレスポエトリー
【公式サイトはコチラ!】

87年に渋谷のPARCO劇場で、『エル・トポ』を観た時の衝撃は今も忘れられない。

映画雑誌などでカルト映画といえば、きまってこの映画のことが掲載されていたし、監督したアレクサンドロ・ジョドロフスキー(当時の雑誌はこういう表記だった)の名前も、フランク・ハーバートの「デューン」を作ろうとして挫折した人、ということで知っていた(高校生の頃に早川文庫の「デューン砂の惑星」にはまっていたもので)。

87年といえば、務めていた会社から単身赴任を言い渡され、東京で独り暮らしを始めた年でもある。
独り暮らしに不安を覚えつつ、その反面、家族に縛られず自由な時間を多く持つことができたために、土・日は映画館巡り、とりわけ地元にいた頃はメジャーな映画しか観てなかったもので、東京にあった膨大なミニ・シアターで上映されている作品群がとても新鮮に映ったものだ(映画を観なくても、これまた雑誌などで名前を見たことのある劇場の前まで行くだけでも嬉しかった)。

その年の3月、永らく劇場公開されてなかった『エル・トポ』がPARCO劇場で上映されると知り、

「カルト映画ってなんやろな? ああいう映画を観たら精神的にどないかなってまうんやないかな?」

なんて思いつつ恐る恐る観たわけだが、予想以上の面白さに一気に惹かれてしまった。
現在にいたるまでマイ・ベスト映画の10本の一つに『エル・トポ』を入れてしまうことを考えれば、実際に精神的にどないかなってしまったわけだけど・・・(笑)
ちなみに、その年の5月には、現段階で生涯ベスト1である『ブルー・ベルベット』に出会ったことを考えれば、87年は本当に大きな影響を受けた年だった。

さて、『エル・トポ』の洗礼を受け、それ以外のホドロフスキー作品にもほとんど触れたし(いまだ本邦公開に至っていない『TUSK』(80)は知人から譲り受けた、ダビングにダビングを重ねた激悪映像のビデオを所有している)、4年前、長いブランクの末に公開された『リアリティのダンス』(13)でのホドロフスキーの健在ぶりには驚嘆したものだ。


さて、今回の『エンドレス・ポエトリー』は、『リアリティのダンス』の続編にあたる。
前作で故郷チリのトコビージャを旅立ったホドロフスキー一家、舞台をサンティアゴに移し展開されるは前作同様アレハンドロの自伝である。

前作での彼はまだ少年であり、物語の大半は彼の父ハイメの物語だった。
今回は青年となったアレハンドロが、封建的なハイメの「医者になれ!」という言葉に逆らい、詩の世界に魅せられ芸術の道を歩もうとする姿を描く。

今回の作品は、これまでのホドロフスキー作品に比べるとかなりとっつきやすい内容になっており(前作を観ていると理解は深まるが、観てなくても十分楽しめるだろう)、ユーモアの要素も一番大きいと思う(映画を観ていて何度も声を出して笑いそうになったが、場内はシ~~~ンと静まり返っていたのがなんとも心苦しかった)。

そしてそれに輪をかけて、エロの配合ぶりがハンパじゃない(笑)
主人公アレハンドロを演じるのは、監督したアレハンドロ・ホドロフスキーの息子であるアダン・ホドロフスキー。
彼を筆頭に、まぁ、劇中の登場人物が脱ぐわ脱ぐわのスッポンポン祭り!

劇場によってはボカシが入れられているバージョンもあるそうだが、僕が観たのは無修正版。
なので、もうなんちゅうか、息子の息子(笑)がスクリーンのあちこちで乱舞する。
いや、息子の息子だけじゃなく、他人の息子まで・・・ホドロフスキー映画に出演するには、老若男女わけへだてなく、カメラの前でスッポンポンになる覚悟が必要なんだろう。

ホドロフスキーといえば、詩的だとか、哲学的だとか、アカデミックな印象で語られることが多いと思うが、もちろんそういう要素は前提としてあるとしても、僕には変態エロジジイにしか見えない(あ、これ最大の賛辞なので誤解なきように。最大の惨事じゃなくてね)。
それでも、そんな変態かつエロな映画のように見せかけて、じつはその裏側には深いテーマがちょろっと垣間見える。
そこの匙加減が上手いんだなぁ。

物語の軸となるのは父親との葛藤なのだが、映画はエキセントリックな芸術家と交流を重ねるアレハンドロの姿を綴っていく。
特に彼が最初に恋愛関係になるステラの印象が強烈だ。
豊満な体格に鮮烈な赤毛。
酒場で2リットルのビールを一気に飲み干し、言い寄ってきた男に激烈なパンチを喰らわす豪快さ。
演じるのがアレハンドロの母サラと二役のパメラ・フローレンスというのも驚き(一見わからないくらいにステラのメイクが奇抜)だ。
サラを演じる時は前作同様セリフがすべてオペラ調(彼女は本職は歌手なのである)というユニークな演出に加え、ステラを演じる時の豪快ぶりに、演出するホドロフスキーも大いに楽しんでいるんだろうな、というのが伝わってくる。


やがて、アレハンドロはある種の挫折を味わい、サンティアゴからパリへ旅立つところで映画は終わる。
クライマックスでは彼と父親ハイメとの確執が、じつに見事な演出で打ち解け合うところを描く。
これには思わず感動せざるを得ないのだが、一見エキセントリックな映画に見えて、実は壮大なラヴ・ストーリーであることを、その時になって知ることとなる。

父ハイメを演じるのも、前作同様、彼の息子であるブロンティス・ホドロフスキー。
だから、息子二人が親子を演じているという、一度訊いたら何のこっちゃ? なんだが、衣装担当はホドロフスキーの奥さんだし、ある種の家内制工業のような映画。
そういうお膳立ての中で自身の物語を描くというのは、彼にとってはとてもやりやすいものだったのかもしれない。

この映画はフランス、チリ、そして日本の合作となっている。
なぜ日本? と思ったが、本作はいわゆるクラウド・ファンディングで作られた映画であり、そこに配給会社アップリンクも協力したということだ。
巨匠の作品をこういう形で実現させていくというのも、映画の内容とはまた別に感動的である。
また、ホドロフスキーを愛する人々の力でもって映画が作られていく、やはりそういう意味においても本作は壮大なラヴ・ストーリーなんだな、と実感した。


この後、ホドロフスキーは自伝のパリ編を作り、その後メキシコ編(ここでようやく『エル・トポ』を製作した頃の姿が描かれるのだろう)を作る予定なんだとか。
齢88にしてますます盛んなホドロフスキーの新作を目の当たりにして、そのパワーは健在であることを実感したし、当然この後の映画製作に邁進することを信じる。
楽しみは尽きない。



📖パンフレット📖

・縦257㎜×横182㎜
・20ページ 中綴じ製本
・有限会社アップリンク
・定価:800円(税込み)

配給元であるアップリンクの浅井氏による、本作の製作に関する解説ページが読み応えあり。
また、アレハンドロ・ホドロフスキー、アダン・ホドロフスキーへのインタビュー記事など、さすがミニ・シアター作品ならではの内容の濃いパンフレットになっている。
最後にはクラウド・ファンドに協力した方々の名簿が3ページにわたって掲載。
出演者のプロフィールが掲載されているのは当然だが、内容の濃いパンフではあるものの、唯一、日本人女性の出演者がおられるのだが、彼女のついての記述が一切なかったのは残念。



♬音楽♬
エンドレスポエトリー
スコア担当は前作、『リアリティのダンス』に続き、主演のアダン・ホドロフスキー。

俳優のかたわらミュージシャンとしても活躍しており、作曲作業は慣れたものと思う。
全体的な印象は前作同様で、メインテーマとなるワルツ曲(予告編でも印象的に流れている)は、ラストを盛り上げて留飲を下げる。

一部、父親であるアレハンドロ・ホドロフスキーが『エル・トポ』で書いたパントマイム曲を使用(当サントラにも収録されている)しているのがご愛嬌。

サントラは配信と、最近流の流行りなのか、LPレコードでリリースされている。
前作はCDでもリリースされていただけに残念。
サントラの世界でもLPレコ-ドのリリースが盛んだが、実際にところほんとに需要があるんだろうか?
【amazon MP-3】
【amazon LPレコード】
【iTunes】